2025年度の活動方針
2025年5月28日
一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会
会長 五十嵐 幹

世界経済の見通し
2025年度の世界経済は、依然として不確実性の高い状況が続くと見込まれます。IMFの最新予測によれば、世界全体の成長率はおおむね3.2%前後を維持するものの、地域間の成長格差が拡大する兆しが見られます。アメリカ大統領選挙後の政策転換、引き続き長期化するウクライナおよび中東の地政学的リスク、中国経済の減速懸念などが影を落とす一方、アジア新興国を中心とした堅調な成長が支えとなる構図です。インフレ率は世界的に4.4%へと鈍化する見通しであり、中央銀行の金融政策も安定的な方向へと転換が進んでいます。
テクノロジーの進展
AIをはじめとした先端技術の進展は引き続き加速しており、2025年は「AIの実装フェーズ」とも言える年になると予測されています。生成AIの応用範囲はテキスト・画像・動画に加え、リアルタイムでの意思決定支援やパーソナライズされた体験の自動生成といった、より高度な業務領域に拡大しています。これに伴い、企業のマーケティング活動にも変化が求められ、インサイトの取得からアクションへのスピードが新たな競争軸となりつつあります。
インサイト産業の展望
インサイト産業は、従来の「調査」から脱却し、データと直感を融合させた意思決定支援へと進化しています。生成AIやRPA、BIツールとの統合によって、インサイトの提供価値が質的に変化しており、「結果の報告」ではなく「未来の予測・提案」が求められる時代へと突入しています。2025年度は、業界の更なるオープン化と他業界との連携が重要なカギを握ります。
JMRAは2025年度も引き続き、以下の方針を掲げて、業界の変革をリードしていきます。
2025年度やるべきこと
- JMRA50周年記念事業の推進
JMRA50周年の節目を迎えるにあたり、業界・協会自体の過去の振りかえり、未来に向けての再構築を推進します。
- データ活用の深化とAIとの共創体制の確立
生成AIとBIツール、オープンデータなどを融合した、新たなインサイト創出モデルを模索・展開します。業界全体で共通課題を設定し、横断的なPoC(実証実験)やナレッジシェアを推進します。
- 異業種連携と「共創」の実現
テック企業、スタートアップ、アカデミアとのパートナーシップを強化し、マーケティング・リサーチの枠を超えたインサイト創出の可能性を広げます。
- グローバル視点の導入と地域特性の理解
成長著しいアジア市場や、新興国の消費者インサイトに注目し、国際連携の強化を通じて、調査手法や文化理解の多様性を推進します。
- 業界オープン化の更なる促進
2024年度に引き続き、インバウンド/アウトバウンドのオープンイノベーションを深化させるとともに、JMRA自身のガバナンスや情報開示を強化し、より透明で開かれた組織運営を目指します。
- 若手・次世代人材の育成と参加の活性化
業界の未来を担う人材の発掘と支援に注力します。若手会員のネットワーク形成、生成AIを活用したラーニング環境等の整備を進めます。
2025年度スローガン
「共創と実装で、未来のインサイトを拓く」
重要活動方針
- インサイト産業としての再定義と、業界の垣根を超えた価値共創を目指します。
- AI・データ活用に対する業界全体のスキルアップと実践知の蓄積を図ります。
- JMRA創立50周年に向けた記念事業の企画と、未来への戦略的なビジョンづくりを推進します。
以上