AI活用・情報交流会(2025.12.10)開催報告
インターネット調査品質委員会
二瓶 哲也
2025年12月10日、インターネット調査品質委員会の主催による第9回の「AI活用・情報交流会」が開催されました。今回の情報交流会では、AIとリサーチについての最新動向の共有と、大日本印刷株式会社(DNP)の「ペルソナインサイト」の紹介が行われました。
[1] AIとリサーチの最新動向
インターネット調査品質委員会の二瓶より、10月のJMRAアニュアル・カンファレンスにおける「AIはリサーチをどう変えるのか」のセッション内容を踏まえつつ、AIとリサーチに関する最新動向の共有を行いました。
生成AIモデルの急速な進化
直近では、ChatGPT、Gemini、Claudeなどの生成AIモデル間での開発競争が激化しており、資料作成の自動化や、図表生成のレベルが実用段階に達していることを紹介しました。
リサーチ業界における変化
以下の3つの時間軸で、リサーチ業界にもたらされる変化を紹介しました。
- 業務の効率化(現在)
自由回答のコーディング(アフターコーディング)、不適切な回答(意味のない文字列など)の検知精度が飛躍的に向上しており、従来「手作業でしかできない」と思われていた領域もAIが担えるようになってきている
- 拡張ツールとしての利用(これから)
AIペルソナを用いたターゲットの可視化などの分析により、従来の手法では得られなかったスピード・コストで、インサイトの抽出が可能になりつつある
- データソースとしての活用(未来)
実査(人間に聞く調査)を行わず、「シンセティックデータ(合成データ)」で代替する可能性が議論されている
これからのリサーチャーに求められること
AIがリサーチの業務を代替する動きが進む中で、リサーチャーに求められる力は「問いを立てる力」、「情報の価値を見極める力(インサイトキュレーター)」、「ビジネスへの翻訳力」へとシフトしていく、という考え方を紹介しました。
[2] 「ペルソナインサイト」の紹介
大日本印刷株式会社(DNP)様より、AIペルソナのツールである「ペルソナインサイト」の紹介とデモが行われました。「AIペルソナ」とは、生成AI(LLM)を用いてターゲット顧客の属性、価値観などを再現させた仮想の顧客モデルをつくるもので、直接対話をして深堀することが可能なため、顧客のリアルな本音やインサイトを抽出するためのツールとして、近年、注目が集まっています。
開発の背景
従来の商品開発やパッケージデザインの現場では、定性調査が不可欠である一方、コストや時間の制約がありました。そこで、「よりクイックに、属人化せずに生活者理解を深めるツール」として開発されたのが本サービスです。既存の調査を完全に代替するものではなく、仮説の「壁打ち」や「磨き込み」を行うための補完的ツールとしての活用が想定されています。
「ペルソナインサイト」の特徴
ChatGPTなどの一般的な生成AIに役割を与えてAIペルソナを作成した場合は、「倫理的で環境に良いものが好き」といった優等生的な回答をしがちです(ポジティブバイアス)。ペルソナインサイトはDNP独自のLLM追加学習技術と統計データを活用することによって、生活者の「建前ではない本音」や「思考パターン」を再現するよう設計されており、以下の2つの機能を持っています。
- 100人の共通ペルソナ
標準機能として、現在の日本人の年齢、性別、職業、健康状態、価値観の分布を再現した100人の共通ペルソナが搭載されており、多様な属性のAIペルソナと対話が可能
- カスタムペルソナ
クライアントが保有する購買データやインタビューデータ、SNSデータ等を追加学習させ、特定のターゲット像(例:特定の地域に住む猫好きなど)を緻密に再現することも可能
デモンストレーション
実際の画面を用いたデモでは、AIペルソナに対して「行かなくなったお店への小さな不満は?」といった、人間でも即答しづらい質問が投げかけられました。ペルソナの性格や属性(社長、高校生など)に応じて、清潔感へのこだわりや金銭感覚など、異なる視点からの回答が得られる様子が実演されました。 また、ABテスト機能を用いて、パッケージデザインの比較評価とその理由(言語化が難しい感覚的な部分)をAIに語らせる活用法も紹介されました。
今回の情報交流会は、AIが単なる効率化ツールを超え、リサーチのプロセスそのものを変革しつつある現状が垣間見えた会でした。特に「ペルソナインサイト」のようなツールは、人間には聞きにくい本音を引き出したり、調査の準備段階での仮説精度を高めたりする「壁打ち相手」として、リサーチャーの強力なパートナーになり得る可能性が感じられ、活発な質疑が行われました。今後もリサーチャー同士の有用な情報交流の場として、定期的に開催をしていきますので、次回以降もご期待ください。
2026.1.20掲載