執筆:小柳雅司(ウェブ・メルマガ委員会担当理事)
2025年2月14日、日本マーケティング・リサーチ協会(以下JMRA)は設立50周年を迎えました。その記念すべき年を振り返ります。
2025年は、日本社会全体にとっても大きな変革の年でした。少子高齢化の進展と人口減少が消費構造に影響を及ぼし、生成AIの急速な普及は産業構造そのものを変化させつつあります。また、国際情勢の不安定化や円安基調により、将来への不確実性が一層高まった一年でもありました。
一方、マーケティング・リサーチ(以下MR)業界にとっても新たな挑戦と機会が交錯する一年となりました。その中で、「調査品質維持・向上」「AI活用」「領域拡張」「データ倫理」「グローバル化」を重点テーマに掲げ、業界全体の信頼性向上とイノベーション推進に努めました。また、これからの50年も社会に貢献できる産業として、また従業員個々人が明確な目標を持ち、活き活きと活躍できるよう新産業ビジョンを策定しました。
それでは具体的な活動を紹介します。
インターネット調査における調査品質維持・向上
MR業界の大きな課題のひとつとして、MR調査手法の中心であるインターネット調査に対する危機感があります。
インターネット調査は、スピードとコストというアドバンテージを武器に浸透し、調査の7~8割を占めるまでに至っています。しかし、協力率だけでなく継続率、新規獲得率が低下し、調査パネルの維持に黄色信号が灯っています。
これに対して、インターネット調査品質委員会では、日頃は切磋琢磨している競合他社とも協力し、改善策を検討、カンファレンスでは「サスティナブル宣言に向けて」というテーマで講演を行っています。
これらの活動は、MR業界としての着地点は少し見えはじめていますが、クライアントとも相談しながら、2026年の「サスティナブル宣言」に向けて活動を継続しています。
MR領域におけるAI活用の進化
他の業界同様、AIの活用により大きな変化が起こりつつあります。
調査プロセスの自動化により効率化が進む一方、異業態からの参入による変化や交流による変異も見られます。
また、新たなソリューションとして、実際の調査データを基に拡張・拡大されたシンセティックデータ(合成データ)も登場し、調査対象者が拡張現実の世界になっていく様も注視すべきところです。
AIそのものは、生成AIからGenerative AI(GenAI)、Agentic AI、Physical AIなどへと移り変わるとされており、AIの利活用は不可避のもの、積極的に利活用しなければならないものとなっています。
MR領域の拡張とデータ倫理
Esomarから発信されたMR産業からインサイト産業への移行、国際的にも領域が変化・拡張する中で、日本においても同様の議論が進んでいます。
JMRAは、50周年を機に新産業ビジョンの策定及び綱領の改定を行いました。
新産業ビジョンは、MR産業ビジョン策定委員会を新設、10年後、20年後を担う中堅・若手が中心となり1年を掛けて策定、JMRAアニュアル・カンファレンスにて発表しています。
「ありたい未来を創る探究主体として、人を・企業を・社会をインスパイアする」
このステートメントは、我々のスタンスを変えて、より顧客・社会に貢献するためにどう変化すれば良いのかを端的に表現したものとなっています。
また、MR業界は「綱領」を持つ特異な業界とも言えます。消費者・生活者の声を集める機関として信頼される調査であること、また、そのために集めた個人情報を保護することを最優先要件として綱領の改訂を実施しています。
JMRAアニュアル・カンファレンス
2025年最大のイベントとして10月2日JMRAアニュアル・カンファレンス「Next DepARTure ─これまでの50年、これからの50年─」が開催されました。前述の各テーマに沿った講演、海外のAPRC(Asia Pacific Research Committee)による報告など、本年を象徴するコンテンツが並び、1000名近い方の交流の場ともなりました。
2025年当初に掲げた課題の回答がすべて見つかったわけではありませんが、来年以降、振り返った際に2025年がMR業界の第2次、第3次創業とも言える年になっていることを期待したいと思います。
最後になりますが、2025年のJMRAの活動にご協力をいただいた皆様に感謝を申し上げます。
掲載日:2025年12月16日