インターネット調査品質委員会 加藤宏
JMRAインターネット調査品質委員会では、2013年より毎年インターネット調査パネルを保有する主要5社のモニターの状況のモニタリング指標を公表しています。今回は、2025年10月に実施した最新データを公開します。
近年、インターネット調査において、「必要な回答数の確保ができなくなってきている」という声が多く聞かれるようになっています。かつては比較的容易に十分なサンプル数を集めることができましたが、近年は調査の実施そのものが難航するケースも少なくありません。こうした状況は本データが示すように年々深刻さを増しています。各社ともモニター獲得や維持管理の現場では必死の努力を続けていますが、状況は悪化の一途を辿っており、調査実施ルールの根幹からの見直しや対策がなければ、さらに悪化していくことは明らかです。今後もインターネット調査が有効な調査手法として存続させていくためには、従来の延長線上での対応では不十分であり、業界全体として調査の運用ルールを根本から見直し、早急かつ実効性のある行動を起こすことが必要になっています。
加速するアクティブモニター数の減少
インターネット調査には、アンケートに回答するリサーチモニターの存在が不可欠です。モニターを保有する調査会社は、モニター数の獲得や継続的な回答を促すため、さまざまな施策を行っています。これらの取り組みによって一定のアクティブ率は維持されてきましたが、近年ではそうした努力にもかかわらず、リサーチモニターのアクティブ率の低下傾向は止まらず、状況はむしろ悪化しています。
図1で示しているのは、2013年のアクティブ率を100%にした場合の経年の年代別のアクティブ率の割合です。アクティブとは、1ヶ月間に1回以上アンケートに回答をした人を指します。
図1 ネットリサーチモニターのアクティブ率の推移(対2013年比)
このデータを見ると、2020年前後はコロナ禍で在宅時間が増えた影響もあり、アクティブ率が一時的に増加していますが、その期間を除くとアクティブ率は減少傾向が続いており、2025年には、ほとんどの年代において対2013年比で50%を下回っており、非常に厳しい状況となっています。つまり、2013年と同じ規模のモニター数を抱えていたとしてもアンケート回収をする力は半分以下に落ちているということです。
10代においては、モニターを保有する調査会社が特に力を入れて維持の対策を行っていることから、他の年代よりもアクティブ率が高い状態が続いていましたが、2021年以降は急激に減少しています。若年層向けにさまざまな対策を講じているものの、回答者の視点ではアンケートに回答することが魅力に映らない状況になっていると言わざるを得ません。
追い打ちをかける “新規モニターの定着率の低さ”
アクティブモニターの減少を補うには、新規のモニターを獲得する必要がありますが、この獲得もますます困難な状況となっています。SNSや動画視聴など他のコンテンツに時間を費やす人が増えていることや、アンケート回答によって得られるポイント謝礼が少ないことなどが影響し、アンケートモニターに登録したいと思う人は年々減少しています。それに加えて、モニターに登録しても継続的にアンケートに回答する人も年々減少しており、この新規モニターの定着率の低さがアクティブモニターの減少にも大きく影響を及ぼしています。
図2は、新規登録者の年間アクティブ維持率の推移を示しています。定点調査として各年10月の1ヶ月間の状況を前年と比較し、新規登録者がどれだけ維持できているのかを示したものです。
新規にモニターに登録した人のうち1年後もモニターとして継続している人の割合は、2023年の年代計では19.2%であり、前年から約20%の人しか残らない状況でした。これが今回2025年は8.2%までさらに低下しており、必死に獲得した新規モニターも1年後には10人に1人しか残らない状況であることを示しています。この減少傾向はすべての年代に共通して見られ、とりわけ10~20代では5%未満という極めて深刻な低水準となっています。
図2 新規登録者の年間アクティブ維持率
インターネット調査の未来には “アクティブモニターの確保”が不可欠
インターネット調査を継続していくためには、アクティブモニターの確保が不可欠です。そのためには、「モニターが継続して参加したくなる調査」を実施する必要があります。とくに、回答者の大半がスマートフォンを利用するようになった昨今では、調査票を作成した際に一度スマートフォンで実際に回答してみて、自身が回答したいと思える調査票になっているかを確認することが重要です。
2025年10月に開催されたJMRAアニュアル・カンファレンスにおいて、インターネット調査委員会は「インターネット調査サステナブル宣言」*として、以下の5つの素案を提言しました。
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モニター満足度の向上
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調査設計の品質確保
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スクリーニング調査の適正化
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業務プロセスの再設計
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調査品質の共同体制の確立
この中で、調査協力者の回答負荷を下げる調査企画・調査票設計と、それについてクライアントと十分に話し合う業務プロセスの重要性、あわせて、負荷に見合った適正な謝礼やモチベーション向上施策により、モニター体験を高める必要性について述べています。とりわけ、マトリクス設問の見直しやスマートフォン対応はもちろん、調査の大半を占めるスクリーニング調査の適正運用は、特に緊急度の高い課題です。また今後は業界全体で、生成AIなどの新技術を活用した不正回答検知や調査手法の工夫に関する知見を共有し、品質向上に取り組むことが求められます。
こうした取り組みは、アクティブモニター確保への第一歩であり、速やかに実行に移すことで、インターネット調査の未来を切り拓くことができます。モニターの声を反映し、業界全体で改善を重ねることで、持続可能で信頼される調査の仕組みを築き上げることができるでしょう。その鍵は、調査協力者の体験を改善することにあり、調査を企画する人、調査票を作る人、クライアントも含め、インターネット調査に関わるすべての人の行動にかかっているのです。
掲載日:2026年1月20日