開催報告「生成AI活用・情報交流会(第6回 2月度)」(2025.02.17)
インターネット調査品質委員会
二瓶 哲也
2025年2月17日、第6回の「生成AI活用・情報交流会」が開催されました。この情報交流会は、JMRAのインターネット調査品質委員会が主催し、業界の発展のために生成AIに関する情報をオープンに交換し合うことを目的に2024年6月より実施しています。
今回の情報交流会では、事前に開催した「生成AIを始めとする新たな技術によってリサーチの未来がどうなるか」をテーマとした座談会(FGI)の内容について報告しました。
この座談会は2025年1月16日に開催され、リサーチ会社でAIを活用したサービスの開発や推進の最前線で活躍している方々にお集まりいただき、以下の2つのグループに分けて実施したものです。
リサーチャーグループ(6名):社内の業務において生成AIの活用を推進するリサーチャーの方
エンジニアグループ(5名):生成AIを活用したサービスの開発に関わるエンジニアの方
1)toittaの紹介
座談会の分析に用いたtoittaの紹介を行いました。インタビュー動画または音声を読み込むことにより、発言録の書き起こし、切片の抽出、発言内容のグルーピングなどを自動で行う機能紹介と共に、座談会の分析を担当したリサーチャー目線でのtoittaの使用感の共有を行いました。「発話の書き起こしの精度が高いこと」や「発言録からすぐに動画に戻って確認できる」といった機能に高い評価が得られていました。開発元である株式会社はてなの米山様からは、新機能の「クロスレポート機能」の紹介が行われ、今後、分析面の機能強化を行っていく方針を説明いただきました。
2)リサーチャー座談会の内容共有
生成AIの活用を推進する立場のリサーチャーの座談会では、現時点での生成AI活用から将来的な業界への影響まで幅広く議論されました。主な議論のポイントを以下にピックアップします。
- 直近では定型作業、翻訳、要約、調査票作成など、「生成AIが得意なこと」を利用した効率化がメインで使われている
- 生成AIは今後のリサーチャーにとって不可欠な存在になっていく
- 他業種やプラットフォームベンダーの参入や、クライアント企業のリサーチ業務の内製化が進むことはリサーチ業界への脅威
- 専門的な尖った領域やコンサル領域など、リサーチ以外の領域へのシフトが必要
- これからのリサーチャーにとっての必須スキルは、AIとの対話力や、出てきた結果の評価力
- 判断力などのリテラシー。コミュニケーション力や知識・洞察力も重要度が高まる
3)エンジニア座談会の内容共有
生成AIを活用したサービスの開発に関わるエンジニアの座談会では、Synthetic Data(合成データ)の活用や、センサーデータ・ログデータの進化がどのように業界に影響するのか、など、技術活用の話題について多く議論されました。座談会での発言をピックアップした内容(切片)をインプットデータとして、ChatGPTを使った「まとめ」を以下に紹介します。「GPT-4o」と比べて「推論能力」が強化された「o1」を使っています。
<ChatGPT o1 を使ったまとめ>
- リサーチ会社のビジネスモデル再構築の必要性
企業がAIやログデータを活用して内製化を進める中、調査会社は「単なるデータ収集代理」から脱却し、コンサル的機能やインサイト創出に強みを置く方向へシフトする必要がある。
- リアルデータの価値とシンセティックデータの共存
シンセティックデータは仮説設定や初期段階の検討に役立つ一方、ビジネスを前に動かすためには「どこまでが推定データか」「どこからがリアルデータか」を明確にコントロールし、適切に組み合わせる運用設計が重要になる。
- アスキングデータの再定義:主観の深堀り
ログやセンサーで「行動」は把握しやすくなるが、「意識・感情」は依然として直接聞かないとわからない部分が多い。アンケートなどの調査を通じて得られる「心の動き」をどう有効活用するかがリサーチのコア価値となる。
- クライアント企業との共創体制の整備
生成AIやダッシュボード化の流れに合わせ、クライアントと協働でプロトタイプを作ったり、データの可視化ツールを活用する提案力が必要。データ活用のガイドライン策定などを通じて、調査会社が企業のDX推進をサポートする役割も期待される。
- リサーチャーのスキル変革とリテラシー向上
AIツールの適切な活用に加え、確率論やプログラミングの基礎知識も求められる。
“使いこなせる人材”を増やすための社内教育、あるいはツール化が組織としての競争力を左右する。
- 社会的価値としての調査の意義強化
大規模調査の代表性や回収率の低下を補うには、行政・公共機関との連携や、回答動機を高める新手法の開発が必要。政策形成や社会課題解決に寄与するための調査設計をリサーチ会社がリードしていくことで、業界の存在意義を高められる可能性がある。
これらのポイントは、生成AIの急速な進化やデータソースの多様化によって、リサーチ領域が大きく変革期を迎えていることを示唆しています。リサーチ会社やリサーチャー個人が技術動向に追随しつつ、自らの強みや独自性を再構築していくことが、今後の成長と持続的価値提供の鍵となるでしょう。
今回の情報交流会で紹介した座談会では、生成AIが業界に与える影響について、様々な角度から意見が出され、多くの示唆が得られました。次回の情報交流会は、4月9日(水)18:30~の予定です。本座談会について追加分析した内容の紹介や、テーマごとにより深いディスカッションを行うことを考えています。どうぞお楽しみに!